初学者の数学が分からない理由の90%は証明の書き方を知らない

現在、私は数学科2年生向けの位相の授業にて、演習のTAをしているのですが、学生さんの解答の中には、「さすがにこの解答はちょっと…」というものがちらほら見受けられます。私は、数学の解答はある程度正しく書けないと、数学力が向上し辛いと思っています。なぜなら、よく数学書では頭の良い数学者の方が本を書かれるので、証明の大部分が端折られて書かれているため、「これは本当に証明できているのか…?」という気持ちになることが多々あります。そのため、証明を正しく書く力が備わっていないと、何が端折られているのか、この証明で今何を示しているのか、が分からない。結果、証明が理解できないまま、本を読み進めても、また次の命題の証明が分からないという無限ループに陥り、数学書全体の理解度がかなり下がります。ですから、私が担当している学生の皆さんには、ある程度きちんとした証明を書いて頂きたいと思って、TAの業務に努めています。そこで、今回は「なぜひどい解答を書いてしまうのか」という話をしたいと思います。もし初学者で数学が理解できないと悩んでいる場合は、よろしければこちらを参考にして、自分の証明の書き方は大丈夫だろうか、と確認してみてください。

ひどい証明を書く主な理由は、結論から言うと「証明の書き方を知らない」ことが原因だと思っています。証明を書く上で、大前提として「定義通り示す」ということがあります。集合の一致A=Bが示したかったら、定義通りAから元を取ってきて、それがBに含まれること、さらにBから元を取ってきて、それがAに含まれるを示す。この至極当然のことができていない人がちらほら見受けられます。これができていないため、「何を示しているか分からない」「これで命題を示したことになっているか分からない」「どのように証明を書けばよいか分からない」という事態に陥ると私は考えます。

証明の書き方については、「明らかと書くな」とか「同値をむやみやたら使うな」など、言いたいことはたくさんありますが、今日はその中でも一番重要で、できていない確率の高い「定義通り示す」ということについてお話ししました。そこを意識するだけでも、自分にとっても読み手にとっても、読みやすい証明になると思います。また、自分の証明が不安だという方は、周りの数学のできる人(ただし経験上あまり学部1,2年の人は止めたほうがいいかもしれない。できれば学部4年生以上が良い。なぜなら、ゼミで担当教員にボコボコにされて、自分なりの証明の書き方を会得しているであろうから)やTwitterの方たちに証明の添削を依頼してみるのはどうだろうか。兎に角、数学力の向上の第一歩は、「証明をきちんと書けるようになること」だと思います。証明がうまく書けない、書ける自信がない初学者の皆さんは頑張ってください!

準同型定理は自明です

最近の私の中でのマイブームが「自明」という言葉なのですが、周りの人間に「それは自明じゃない」と強く反論されます。

そんな僕が一番初めに自明だと言い始めた準同型定理について、なぜ自明なのか、自分の中のイメージをここに記したいと思います。

 

ここでは群準同型定理のお話をしたいと思います。(環や加群もほぼ同じイメージです)群準同型写像f:G→Hに対して、これの性質を崩さない全単射な群準同型写像にするにはどうすればよいかを考えてみたいと思います。

全射は比較的簡単で、fをf:G→f(G)と値域を制限すれば、これは全射になります。しかも、f(G)は群になるので非常〜〜〜に嬉しいのです。

では単射にしたければどうすればよいでしょうか?一番シンプルな考えとして、fで移した時に同じ行先に向かうようなGの元を除けば、fは単射になりそうです。

しかし、これはあまり嬉しくありません。なぜなら、Gのfでの同じ行先のものを除いたものは群であるかどうか、一般的には分からないからです。

そこでもっと別のアプローチとして、同じ行先のものをグループにして一つの元として考えるとどうでしょう。結果として、これは剰余群と呼ばれる群になってくれて、この剰余群から値域を制限したものは全単射群準同型になることがわかりました。

 

このような感じで、(少なくとも初等的な範囲は)一番初めに考えた人の気持ちを考えていけば、ほとんどの定義、命題は自然に自明になると思います。だから、新しい概念を考えるときにきちんと経緯を話してくれている本を読むと、自然と「自明な本だ」(褒め言葉)と口走ってしまいますね。

はじめまして

皆さんが、はてなブログをやってるのを見て自分も始めたいなと思って始めてみました。
特に語ることも無いので、軽く自己紹介を。

現在、数学科4年で来年大学院に進むことが決まっています。今は、代数幾何に興味があり、上野先生の「代数幾何」で勉強したいのですが、ザギヤーさんの「数論入門」とノイキルヒさんの「代数的整数論」をゼミで読んでいて、なかなか時間が取れていません。どちらか早く片付けて上野代数幾何に時間を割きたいです。

次回からはもっとしっかりとした題材について、書こうと思います。まあ、書ければの話ですが。